この記事では、強豪、それなりにうまいプレイヤー、弱いプレイヤーが入り混じったトーナメントでの戦略を、特にアンティがどのようにプレイに影響を与えるかに焦点を当てて述べていく。
                                  まずは理論から。(スタックとブラインドの大きさに対して)アンティが大きくなればなるほど、ポットを取る価値が大きくなり、逆にポットを取れないことで失うものも大きくなる。つまりアンティが大きいほど、よりルーズにプレイせよということだ。
                                  
                                  10人テーブルで、あなたがBB。誰かがレイズしてきたとしよう。 
                              
                                  
                                    | SB | BB | アンティ | レイズ | コールに 必要な額(A)
 | コールした 場合のポット(B)
 | 必要な勝率 (A)/(B)
 | 
                                  
                                    | 1000 | 2000 | 100 | 5000 | 3000 | 12000 | 25.0% | 
                                  
                                    | 1000 | 2000 | 200 | 5000 | 3000 | 13000 | 23.0% | 
                                  
                                    | 1000 | 2000 | 300 | 5000 | 3000 | 14000 | 21.4% | 
                                
                               最初のケースのほうでは、あなたはブラインドを守るべき度合いが、2番目のケースよりも強くなる。このコンセプトはビッグブラインドに限らずどのポジションでも当てはまる。 
                                これは至極当たり前のことのように聞こえる。だが、私が何百ものライブトーナメントをプレイしてみてきたのは、ほとんどのプレイヤーがその逆をやっているということだ。トーナメントの最初のほうのステージでは、4人かそれ以上のプレイヤーがフロップに参加することも珍しくない。だがトーナメントの後半では、多くのポットがフロップを見ることなく取られているし、フロップがあいた場合でも参加者は大抵2人だ。これにはいくつかの理由がある。 
                                まず最初に、始めのほうのステージではスタックが一般的にはディープだということがある。多くのプレイヤーはブラインド数個分程度ではスタックは大きく減らないと感じているし、フロップを大当たりさせれば小さなリスクでダブルアップも可能だと思っている。この論理は妥当なもので、特に強いプレイヤーが弱い相手とプレイしているときにはそうなのだが、多くのプレイヤーがそれをやりすぎていて、特に序盤のステージにそれが強くでている。後半のステージでは、ゲームはよりアグレッシブになり、プレイヤーがタイトになるのもそのためだが、私の見たところでは、プレイヤーはテーブルがアグレッシブでない時にもあまりにタイトにプレイするというミスを犯している。こうしたことが起きるのは、プレイヤーがステークスが高くなっており、いまやとっても大切になったトーナメントでワンハンドで飛んでしまいかねないことを感じ取っているからだ。また、多くの場合にはプレイヤーはテーブルの流れにのってそのままプレイし、それを利用してやろうとは思っていない。当然のことだが、私がやるのはその逆だ。 
                                トーナメントの最初のほうのステージでは、私はプリフロップのレイズ額を大きくする。もしブラインドが25/50でアンティがなく、平均スタックが5,000から15,000のあいだなら、私はプリフロップでは200にレイズする。もしリンパーがいたら、一人につき50を上乗せする。その一方で後半のステージでは、プリフロップでのレイズは小さくする。ポットをオープンする場合なら、通常は、ビッグブラインドの2.5から2.75倍である。 
                                必死な状況のはずなのになぜそうするのか?それは最初のステージでは、参加するハンド数を少なくすることが正しいのであり、参加するときにはより大きな見返りを期待するからだ。だが一方でアンティが大きな時には、より多くのポットに参加することが正しいのだ。この段階を過ぎると、参加したハンドでどれだけ大きなポットをとるかということはそれほどの関心事にならず、それよりもより多くの数のポットを取ることのほうが重要となる。従って、ポットを取れなかったときのリスクを最小にすることが大事ということでもあるのだ。言い換えると、プリフロップでのレイズを小さくすることで、ハンドで勝てなかった場合に失うチップを少なくしようということだ。 
                                トーナメントの最初のほうのステージでは、私は非常にタイトでアグレッシブにプレイする傾向にある。ほとんどの場合は、私は平均的なプレイヤーよりはルースなので、タイトといってもあくまでも相対的にそうだ言うことだが。またベットをするときにはトーナメントの後半の場合よりも額が大きくなる、というのも、大きな手が当たった時に相手のチップを全部奪い取ってしまうチャンスが欲しいからで、これにはポットをあらかじめ大きくしておいたほうが可能性が高い。こうしたプレイには、通常はやらないようなスモール・ポケットペアからのレイズなども含まれ、これでセットをヒットさせたら、多くのチップを奪い取れる可能性が出てくる。 
                                後半のステージでは、私はよりルースに、そしてパッシブにプレイする。すでに述べたように、これは多くのプレイヤーが行っている修正とは真逆だ。ではなぜそうするのか?なぜなら、より多くのハンドに参加することができるからで、それこそがアンティが大きくなった時にやるべきことなのだ。 
                                私がよりパッシブにと言ったことに驚かれたのではないだろうか。たいていの場面ではそれでもまだアグレッシブなのだが、2つの面でアグレッシブさを抑える。まずベットのサイズだ。ベット額は小さくなり、これはプリフロップでもポストフロップでも同じである。わたしが狙っているのはより多くのポットをとることで、その場合のリスクをできるだけ小さくしたいと思っている。また、誰かのスタックを奪い去るということの価値は、平均スタックが(訳注:ブラインドに比して)小さくなるにつれて、低くなる。始めのほうのステージでは、標準的なコンティニュエーション・ベットの額はポットの約85%程度だと思うが、後半のステージではポットの50%にまで落ちる。私がパッシブになるもう一つの側面が3ベット(プリフロップでのリレイズ)である。 
                                わたしがプリフロップでよりコールが多くなるにはいくつかの理由がある。AAやKKといった大きな手では、ほとんどのプレイヤーはプリフロップでリレイズすべきだと考えている。だが、ここはスムースコールしたほうが、より多くの金を取れるのだ。スタックが(トーナメントの序盤のように)ディープなときは、ポットをできるだけ早く膨らませるのがベストだが、トーナメントの後半で、スタックが小さい時にはコールに留めておく方がいいのである。 
                                私は、7-7やQ-Jといった、期待含めの手でもよくコールするので、フロップは完全に外れるかもしれないが、その場合にブラフのチャンスがある。強い手の時にコールで留めるようにしておくことで、プリフロップでのコールがより強く見え、フロップ後にベットやレイズをした時に強いと思われる。また、私は大きな手が入った時にコールするので、私のレイズにコールしたときに、後ろのプレイヤーはリレイズしにくくなる。彼らには私がハイペアを持っているかどうかわからないのだ。 
                                プリフロップでコールする別の理由が、一般的に言って、ポットを小さくしておきたいということだ。これは私がスモールボールプレイヤーだということでは決してなく、私は自分のスタックすべてがどうなるかの瀬戸際で少しでも有利ならそれをプッシュしたいタイプであり、これはスモールボールプレイヤーの戦術とは逆だ。テーブル全体があまりにタイトなものだから、つねに小さな額をプリフロップでプッシュし、フロップ後に小さな額をベットし続けることで、結果的に多くの額のチップを取れるということはあるのだが。 
                                このルースな戦略を用いているので、私のスタックは変動が激しい。ポットを数多くプレイするので、スタックサイズは常に上下動を繰り返す。私の思うには、これは悪いことではない、というのは、賞金配分が上位に固まったトーナメントストラクチャーがあるからだ。私のようなスタイルだと、早い段階で大きなスタックを手にするが、長期的にはそのほうがメリットがある。大きなスタックを持っているときは、相手は(ビビって)打ち返してくることが少ない。
                                この記事に関してのお断り書きをしておくべきだろう。私は、この記事を読んでいる初心者プレイヤーに、私の戦略を取り入れて、期待含めのハンドをもっとプレイしろといっているのではない。もしあなたがまだ勉強中という段階なら、より標準的なタイトアグレッシブな戦略を取るほうがいいだろう。もしあなたが相手よりもより経験の深いプレイヤーなら、このよりルースなスタイルを試してもいいと思う。 
                                さて、アンティがプレイにどう影響するか、そしてそれがトーナメントのダイナミックスをどう変えるかということはわかったと思う。私は、相手のプレイスタイルをどう利用するかということについての記事を私は数多く書いてきたが、この記事もそのひとつである。もしアンティによってポットが膨らみ、相手のプレイヤーがそれに対応してプレイをルースにしていないなら、それによって生じた隙を突くのは私であり、ポットを出来るだけ多くスティールするのだ。それらのポットの多くは取りそびれるにしても、長期的にはより多くのチップを手にできる、というのも私のスモールベットに対してブラインドとアンティがあるゆえの大きなポットサイズ故に、リスク対見返りは十分だからだ。 
                                私のポーカーに関する洞察について知るには、www.JustinBonomo. com.を見てほしい。
                                Justin Bonomo