ディープスタックのススメ

 

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ディープスタックのススメ

どれだけディープならディープスタック?
これは興味深いとともに、おそらく明確な答えのない質問だ。"Professional No Limit Hold 'Em"(2007年発売)では、著者は少なくともオールインに行くまでにポットベットが4回必要という理論から、200bb以上をディープと定義している。Full Tiltはこれに倣ってか、ディープスタックテーブルでの最大バイイン額を200bbに設定している。

個人的には、ディープにプレイするためにゲームやハンドで最低限必要な実効スタック(effective stack)サイズが200bbだとは思わない。今日のポットレイズのプレイスタイルは、あたかもスタックがディープであるかの様にプレイされている。平均的なプレイヤーは、例えば2007年に比べてトップペアのハンドで全スタックを賭けることはしなくなった。よって、いわゆるディープスタックプレイは、100bbでも充分な場合が多い。逆に、$10や$25のステークスでさえも3ベット、4ベットは当たり前になっており、ポットに対するスタック比率(SPR)の平均は昔に比べるとおそらくずっと低くなっているはずだ。そして、この状況下ではよりディープなゲームが、あたかもディープではないかのようにプレイされている。

今日のゲームでは、レイズされたハンドに対して実効スタックが130bb前後あれば、標準の100bbよりもディープにプレイできるだろう。ただその差異は特定の状況でのみ重要なので、あまり気にすることはない。

 

なぜディープにプレイするのか?
より大きなポットを勝ち取るため。

 

自分もディープにプレイすべき?
もしあなたのポストフロップスキルが、今のステークスのディープスタックテーブルの中で優れているならディープにプレイするべきだろう。逆にあなたのポストフロップスキルがそのステークスでは平均以下ならディープにプレイするべきではない。ディープテーブルは、そのステークスでは勝ち組だと思っている常連が集まりやすいので、あなたが対戦する相手のレベルは平均的に非常に高いことを頭に入れてほしい。

 

テーブルと席の選び方
いざディープにプレイし始めたら、あなたよりも優れているであろう常連を見極め、彼との対決には慎重になるよう肝に銘じるべきだ。理想的には、ターゲットにしているフィッシュに対してポジションがある場所に席を取りながら、常連があなたに対してポジションンがある位置に着かれることは絶対に避けたい。これは一般的な席選びの基本だが、あなたが100bbよりもディープにプレイする場合は、より重要になる。なぜなら、あなたは常連からより大きな金額のプレッシャーを掛けられることになるからだ。

この重要性は極めて大きく、ディープスタック初心者は、自分を狙いそうな常連があなたに対してポジションがある位置にいたら、そのテーブルは去った方がいい。

自尊心を捨てることだ。もしあなたがディープスタック初心者で、後ろにあなたが初心者だと気づいている上手い常連がいたら、とにかくテーブルを離れることを考えよう。この状況は、例えば100bbのテーブルであなたがスタックを150bbまで築き上げ、あなたの後ろの常連も同じ額を築いた場合でも同じだ。この場合でもテーブルを去ることを考えよう。大きなスタックを持っているフィッシュに対してポジションがない限りは。しかもその場合でも、フィッシュから搾取するのは、後ろの常連のせいで難しいだろう。これは勝ち逃げするいい機会だ。

 

なぜディープハンドのプレイの仕方は通常と違うのか?
前述の"Professional No Limit Hold 'Em"のポーカー界における最大の貢献は、スタックサイズを考える際に使える枠組みを構築したことだ。この枠組みがこの問いに対する返答の基幹になっている。

ディープテーブル(もしくは実効スタックがディープなハンド)では、トップペアで最大のバリューを引き出すことは難しい。これは第一に、投機的ハンドに対してリバースインプラインドオッズが与えられるからである。ポットに対するスタック比率(SPR)が低い状況では、仮に相手の投機的ハンドがドローを引いたとしても、あなたはワンペアで利益を出すことが出来る。相手はあなたが金を損するほどの頻度でドローを引くことはないからである。PokerStoveを使えば、このことがよく分かるはずだ。

ディープスタックでは、投機的ハンドをプレイすることが容易に正当化されるほどに、十分な利益が引き出せる。(もちろん、200bbをブラフすることで得られる追加のバリューもある)

 

ディープにプレイする場合にはどのような調整が必要なのか?
"Professional No Limit Hold 'Em"によれば:

1. ドローハンドのバリューは上がる。これは明らかだ。ポストフロップで大きなポットを狙うようなハンドのバリューは上がる。これにはスモール〜ミドルペア、スーテッドエース、そしてミドルスーテッドコネクターが含まれる。

2. ポジションはより重要になる。情報が多いアドバンテージを活用し、またワンペア持ちが大きなポットをプレイする恐怖を逆手にとり、利益を引き出すことが出来る。

これら二つの要素を組み合わせると、ポジションがある場合では、広いレンジのドローハンドでコールし、フロップで2ペア以上を狙うべき、ということになる。同様に、あなたはフロップが自分のハンドにわずかに絡んだ場合、フロートするに値するインプライドオッズを得ることができる。例えば98sでコールしたらフロップでワンペアが完成した場合がこれにあたる。

3. ワンペアのバリューは下がる。これはポット対スタック比率(SPR)の機能ゆえだ。もしあなたのハンドがフロップ時点でトップペアである可能性が高いのなら、4〜7の本当に低いSPRであることが望ましい。この数値はディープスタックのテーブルでは基本的に達成不可能だ。こういったハンドでは利益の最大化を図ることが非常に困難なため、逆にポットを小さくするようプレイし相手のリバースインプライドオッズを最小化するよう努めるべきだ。こういったハンドは最終ポットがプリフロップのポットサイズの4〜7倍以内に収まるようにポットコントロールしなければならない。

4. レイズサイズを多様化してみよう。読まれないようにうまく混ぜなければなっらないが、SPRをコントロールするためにプリフロップベットに5bbと2bbを導入するのも手だ。

"Professional No Limit Hold 'Em"によれば、AAだけはこの調整の例外だ。著者はAKやAQ、QQといったハンドではプリフロップのレイズサイズを小さくすることを少なくとも検討するべきだとしながら、AAだけは別格扱いしている。AAだけは、小さくレイズしなくとも、SPRの数字のマジックによる結果を甘受するに足る頻度で大きなポットを勝ち取ることが出来るからだ。

上記調整に加え、僕は以下の調整も好んで行う:

5. そもそも3ベットされたポットはもはやあまりディープではない。誰かが4bbにレイズしあなたが12bbに3ベットし相手がコールしたら、プリフロップのポット額はほぼ24bbになり、SPRは150bbの実効スタックでは7未満、実効スタックが200bbなら約9である。この数値はワンペアでも機能するSPRである。やや高いが、何とかやっていける。

6. SPRが13前後と高い場合には、ポケットペアをフォールドしてはならない。これには、僕のようにアーリーポジションならスモールポケットペアを捨てているのなら、プリフロップ戦略に調整が必要だ。またプリフロップサイズを変えることによってSPRを操るいい機会だ。例えば、あなたのスタックが100bbでUTGから55で4bbにレイズしたとする。するとボタンが12bbに3ベットして来た。ここでコールした場合SPRは4前後になってしまう、このハンドの数値としては最悪だ。しかし、もしあなたのスタックが200bbでUTCから55で2bbにレイズし、ボタンが8bbに3ベットしたらどうだろう。今回のポットは17、実効スタックは192、SPRは11である。彼の3ベットがポケットペアならば、狙ったとおりのお膳立てが出来た。彼のポケットペアはポストフロップで大きなミスを犯す可能性を秘めているのだ。

もしプリフロップレイズのサイズを多様化させるならば、うまくバランスを取らなければならない。ポケットペアが相当低いSPRを得られないときは、本当に高いSPRのときに上手くプレイするように努めるのがおススメだ。アーリーポジションからポケットペアでレイズし3ベットされた場合、フォールドして損失を抑えるか、4ベットして本当に低いSPRでプレイするかの選択肢があるのだ。

7. 強いハンドでは、ターンでレイズするよりは先にフロップでレイズしよう。こうすることによってベットサイズが加速度的に増加し全てのスタックをポットに入れあうことができる。スタックが100bbなら、例えばドライなボードでのフロップセットといった強力ハンドを、チェック/コールもしくはフラットコールすることを支持する。しかしよりディープな場合、相手から搾取するためには少なくとも一度はレイズせねばならない。僕ならCベット率が非常に低い相手に対しては、相手がレイズをコールできるほど強いハンドを持っているだろうと読んだらドライなフロップではレイズする。

8. 3ベットのサイズを多様化させよう。これは肝だ。あなたがバリューのために3ベットするなら、SPRをできるだけ低くしたいものだ。あなたがブラフかセミブラフでレイズしているのなら、相手があなたのCベットをコールすることによってポットにコミットしなくて済むようなSPRに下げなければならない。ここでも、3ベットのサイズを多様化する場合、ときには混ぜ合わせることが必要だ。

9. 200bbをプレイすることによって、複数のベッティングラウンドに跨ぐブラフで大きなポットを勝ち取ることができる。

これはいわゆるファンシープレイシンドローム(奇をてらい敢えてトリッキーなプレイをしたがる傾向)だと個人的には思うが、確かに上手いプレイとして機能することもある。

以下の調整はベルーガの法則に倣っている:

10. 人はアーリーポジションからのレイズをAAを打ち負かす意図でコールするのだから、アーリーポジションからはAAを負かそうとしているハンドを打ち負かすハンドでレイズしろ

ベルーガの法則は特にAJs、KQs、KJsなどをレンジに加えることを勧めている。

マイクロステークスでのグラインダーをディープテーブルで搾取する
上記調整に関してはほとんどが"Professional No Limit Hold 'Em"からの引用か応用であり、あらゆるディープに適用され得る。しかし我々はマイクロステークスでプレイしている。そしてマイクロのプレイヤーは特有のミスを犯す。

1. ワンペアを過大評価する。

2. 二番目に強いハンドをフォールドできない。

3. インプライドオッズを過大評価する。

4. 3ゆえにドローを追いすぎる。

これらから、いくつかの重要な結論が得られる:

1. ディープスタックでは、プレミアム対超プレミアムの戦い(battle of the coolers)で勝利を収めることが可能である。僕はディープスタックでプレイする以前は、KK対AAのような対決での期待値は0だと思っていた。つまり自分がKKでAAの相手にスタックを献上することが何度かあったとしても、同様にAAでKKの相手からスタックを何度か献上される訳だから、プラスマイナス0になるはずだと。

ディープスタックでプレイすることによって、その他のプレイヤーがプラマイ0で終わるところを、この戦いに勝利し利益を引き出す機会が与えられるのだ。これはスタックがディープになればなるほどスキルが重要になるという基本ルールのひとつの適用だ。しかしあなたがディープスタックを長くプレイするなら、このプレミアム対超プレミアムの戦いに勝利する機会を窺わなければならない。セット対オーバーセットで負けている状況で、以後のベットを回避するためにミドルセットをフォールドするのは200bbスタックがあっても出来ないだろうが、こちらのAAで相手のKKからより多くのスタックを勝ち取るためにポットサイズをコントロールしたり、KKでAAを相手にしたときの損失を最小に抑えるためにポットサイズをコントロールすることはできる。

次の応用は"Professional No Limit Hold 'Em"からの直接の引用。著者のアドバイスに従って、AQでのレイズを通常の3.5ないし4bbではなく3bbで(だいたい)レイズしてみる。長期的に見ると、例えばAT相手に2ペアを引かれた場合や、フロップでセットを引いた相手に対する損失を抑えることが出来るという訳だ。

あなたのフィールドではAQが平均的に3.5bbにレイズされるとしよう。フロップでセットないし2ペアをヒットさせる度に、あなたはそのフィールドで失う額よりも平均的に大きなポットを勝ち取ることになる。その差額は全てあなたの利益だ。これは、一方であなたがディープスタックのゲームで自分のハンドのバリューに従って計画的にプレイしているのに対して、フィールドの他の多くのプレイヤーはそういった調整をしていないことによって生じる利益だ。

2. ディープスタックでプレイする場合は、あなたはワンペアのハンドではポットをコントロールしなければならない。それには様々な手段があり、相手によっても異なるが、肝心なのは、相手のインプライドオッズの過大評価が正当化されないようにすることである。ほとんどの相手があなたに対してドローを追いかけても利益を生み出すことが基本的に不可能になるようにプレイすべきだ。

逆に言うと、あなたが2ぺア以上を持っていたら、ポットを大きく築き上げて、ドローの相手を容赦なく叩きのめすべきだ。

 

mpethybridge著
http://forumserver.twoplustwo.com/78/micro-stakes-full-ring/concept-week-26-playing-deep-544405/