ブラフの極意

 

ブラフの極意


※青字部分は読み飛ばしてもOKです。
最近ブラフに関する投稿をよくみかけるが、僕の考えでは人にブラフの仕方を教えることなど実際出来ない。いつどのようにブラフすべきかについては、絶対的な戦略や理論がないのだ。まずは自分の置かれている状況を理解し、対戦相手のハンドとスキルレベルを把握し、その上で相手を意のままに操ったり、相手のアクションの意図を理解する、ということから始めなければならない。Daniel Negreanuが感心させられることを言っていた。「ブラフにはストーリーが必要だ」と。リバーで思いつきでとてつもないブラフをかましてみて、うまくいくなどと思ってはいけない。リバーでの大きなブラフに失敗したプレイヤーから「ポットを勝ち取る唯一の手段だったんだ」などと何度聞かされたことか。実際そうだったのかもしれないが、全スタックをリバーでブラフする理由には足り得ていない。次章以降では、実際に僕がブラフを仕掛けたハンド、相手にブラフを仕掛けられたときのハンドを見てみよう。僕の「ハンドそのもの」だけに集中し、全く同じことを試してみるだけでは意味がない。むしろハンドに対して僕が何を考えているのか、またなぜ僕がそのようなことを行ったのか、に集中して欲しい。うまいプレイヤーになるためには、うまいプレイヤーのように考えなければならない。うまいプレイヤーのように考え始めるきっかけとして、以下を読んで欲しい。ポーカーにおいてはそれぞれの状況はそのときだけのものであり、全く同じことは二度と起こらない。その個別の状況下できちんと分析し正しい結論に辿り着くかはあなた次第。本をいくら読もうと、ハイステークポーカーをいくら観戦しようと自由だが、実際テーブルに数時間座り、自信を付けて、ハンドを分析し始める必要がある。そうして初めてブラフが成功するようになり、つまりはプレイヤーとして成功するようになれるのだ。

 

@ブラフをコールする
僕が2/5NLの比較的タイトなテーブルでプレイしていたとき。リンパーが多く、みなプレミアムハンドでない限りレイズしない様子。僕はSBでハンドは
A J
4人がリンプインしたが、僕は40にメイクレイズ(5→5→5→5→20)。3人フォールド。ボタンは僕を見てほほ笑んだ。僕には彼がマージナル(普通程度の)ハンドであることが読めた。彼は自分のハンドの強さが正直に態度に出るタイプだ。彼は、「君は今までさんざんレイズしているから」とにこやかに言ってコールし、二人でフロップへ。ボードは;
A T 2のレインボー、ハートが一枚。
僕は55(ポット)ベット、彼はコール。
ターン(ポット165):7
僕はトップペアと同時にナッツフラッシュドロー。この時点での僕の読みではまず彼は僕より強いキッカーのA(AK、AQ)は持っていない。ましてやTTを持っていると思える理由が本当に見つからない。ここでさらにベットしたら彼がコールするか数秒考えたが、まず下りるだろうと判断し、チェックすることにした。
現時点で僕は、自分が最高のハンドを持っており、最高のドローであると確信している。最高の流れは、僕がここでチェックすることによって彼に僕のハンドがJJやQQ、もしくはナッシングだと思い込ませ、僕のフロップのベットをチェックベットと捉えた彼が、Aもしくはビッグハンドを持っているぞ、とブラフしてくれること。僕は彼がターンでベットしたらリレイズでオールインすることに決めた。僕チェック、すると彼もチェックした。思惑は外れたが、最悪のケースではない。
リバー(ポット165):2
フラッシュは成立しなかったが、逆に僕に取っては非常にいいカードが出た。この時点で僕は、彼が22もしくはTT、僕より強いAキッカーは持っていないと確信。数秒考え、彼がAのローキッカーもしくはKTなどのハンドでコールすることを期待し125をベットすることにした。
すると彼は思いもよらぬ行動に出た。オールインしたのである。ショックを受けた僕は、今までのハンドを頭の中で再生してみた。プリフロップのアクションからAのハイキッカーとTTは除外。リバーの2で22がセット(3カード)になったとは想定出来ない。ここで彼がオールインする正当性があるハンドはATの2ペアだけになる。しかし、ターンのチェックが引っ掛かる。ターンで2ペアをチェックするとは到底考えにくい。意味をなさないのだ。これはとても重要だ。僕は相手が自分に勝ち得る全てのハンドを想定し、そのハンドを持っていたら相手がどうプレイするだろうかと考える。ターンのチェックにより、僕の中では、2ペアとセットの可能性が消えた。ほとんどのプレイヤーがターンでこれらがヒットしていたらベットするだろう。彼はチェックすることによって、実に多くの情報を与えてしまったのだ。僕は彼がブラフしているとほとんど確信するに至ったが、彼の残りのスタックサイズを考えるとあまりブラフの意味がないように思えた。僕の125のベットに対し、彼のオールインは180プラスかそこらだったのだ。ただ、今までのハンドのストーリーをつなぎ合わせても彼のオールインはやはり意味をなさず、コールしない理由があるとしたら彼がオールインした額の小ささだけ。ハンドをさらに何度も復習した結果、やはり彼はATを持っていないという結論に達した。ハンドがどのようにプレイされたかを思い合わせるとやはり僕がベストハンドを持っており、オールインの額もブラフではないと決めつける程の馬鹿げた額ではない。
結局僕はコール。彼はQTを見せ、僕がポットを獲得した。
このハンドは、常々ハンドに対して何を考えていなければならないかのいい例だ。いつも複数のレベルで思考しなければならない。自分のハンド、相手のハンド、ベストなゲームの進め方、そしてもし相手がベットもしくはレイズした場合にどうするか、を考えなければならないのだ。これら全ての要因のことを考えると、ことはとても明確になり、より簡単にブラフを仕掛けたり、ブラフをコールしたり出来る様になる。先に述べたようにブラフの使い道は状況あってのものであり、その状況をいかに分析出来るかによるのだ。このハンドの例は多くの人にとってはとても基本的なことに思えるかもしれないが、初心者の方には是非学んで欲しいことである。自分のハンドだけをプレイし相手のハンドを気に掛けないプレイヤーが多過ぎるが、実際は相手のハンドこそが自分のハンドよりもずっと重要なのだ。

 

Aブラフでフォールドさせる
このハンドは僕が非常にリスペクトしていたプレイヤーに仕掛けたかなりクレイジーなブラフである。彼が非常に優れたプレイヤーであり、タイトにプレイし、とても強いハンドでない限り参加しないタイプだと僕は知っている。このことが、そしてこのことのみが、今回のブラフのベースである。つまり僕が相手のタイプを知っており、ハンドに対しどのように考えるかをも知っている、ということ。このタイプのブラフは誰にでも通用する訳ではない。だからこそ分析により正しい結論を導き出すことが重要なのだ。
さて、僕はSB。リンパーが何人かいて、僕はQ Kで30にレイズ.例のタイトなプレイヤーがアーリーポジションからコールし、以降はフォールド。
フロップ:T 7 3(註:レインボー)
僕は45をチェックベット。すると相手は少し考えてから160にレイズして来た。レイズされた僕としては諦めてフォールドするのが妥当だろう。まずはそう考えたが、僕は常にフォールドする前に他の選択肢を探すことにしている。このプレイヤーは何を持っているか?彼はタイトであり、高い代価を払うことを好まない。まず即座にAA、KKを除外。もし本当にこれらハンドを持っていたら驚愕ものだ。次にQQの可能性はあるが、彼ならあのポジションからはまずレイズするだろうし、リンプしたとしてもそれは後にリレイズするためで、実際にリレイズしていないのだから、QQも除外。残されたハンドはJJ、TT、99、88、77、33。TT、77、33は即座に除外。このようなクリーンな(ドローの可能性がない)ボードでセットでリレイズし、AK、AQ、Txあたりと想定した相手をビビらせたり、オーバーペアでさえフォールドさせるようなことはしないだろう。
さあ、これで彼のハンドはJJ、99、88の3つに絞られた。
待てよ…。僕はおそらくタイトなイメージでブラインドからレイズしコンティニュエーションベットしている。相手にとっての僕のレンジは何だろう?現時点ではレンジは大分広いだろう。でも僕がここでリレイズしたら?僕は相手のハンドを3つに絞った。そのうちの2つはリレイズにはフォールドすると確信出来る。そこで状況を改めて分析;彼は160にレイズ、残額は300弱。もう少し持ってくれているとよかったが、僕は真剣にオールインすることを検討している。このプレイの仕方で、彼は確実に僕のハンドをAA、KK、QQ、JJ、TTに絞るだろう。さて、ここが肝心だが、僕はブラフを仕掛ける相手を熟知している!これはとても重要だ。もし相手が他のプレイヤーでJJを持っていたらこの戦法はまず通用しないだろう。しかしブラフは状況を把握して相手を信じ込ませるストーリーを作り上げることだ。僕は相手のレンジにJJを含んだが、このハンドでもほとんどの場合フォールドすると感じている。さらには、もし彼がコールしたとしても、僕にはまだオーバーカードが2枚ある。ということで僕はオールインし、相手に試練を与えることにした。もし88か99ならすぐにフォールドすると踏んだが、そうはしなかった。2分が経過。これは確実にJJと確信。彼は何度もフォールドとコールの仕草を繰り返した。ついに彼は自分はJJを持っており、ブラフにしか勝てないが、バッドコールに踏み切る、と自ら言い、残り10秒でコールした。クソ!ブラフが失敗した。どうして失敗したブラフのことを書いたのだろう。繰り返すが、ブラフは状況を把握しストーリーを作り上げることだ。このハンドではリスキーなプレイをしようと決断したが、自分なりに状況をよく分析出来たと感じたし、そんなに悔しくはなかった。では相手のコールの判断はまずかったか?10人卓のノーリミットホールデムでタイトなイメージの僕相手という状況では、そうだろう。グッドプレイヤーに対してとても信憑性の高いストーリーを作り上げたと思うし、ぼくの感触では相手は本当にまずいプレイだと自覚しながらコールしている。この戦法は非常にハイリスクであり、使うには注意が必要である。何度も繰り返しているが、とにかくポットに大きい額をオールインして奪い取るということではない。何が行われているかを考え、分析し、結論を導き出す。初心者の方へのアドバイスとしては、はあまり頻繁にブラフをしないことだ。もっと経験を積んで、相手のプレイヤーのハンドを特定出来るようになれば、自分の読みを信じて少し積極的に仕掛けてもいいだろう。

 

Bセミブラフ
次はセミブラフについて説明したい。このプレイは必要以上によく使われる。ブラフを除けば、スーテッドコネクター(註:8 9など)が割に合わないにもかかわらず必要以上にプレイされている典型だと思う。ほとんどのトレーニングサイトはスーテッドコネクターを気に入っていて、積極的にプレイすることを奨励している。正直なところ多くの人がこれに従うほど、僕は儲かる。ハンドを成立させていてフォールドする可能性がない相手にブラフを仕掛けようとし、ただのドローで金を失うシーンを何度も見て来た。ボトムペア&フラッシュドローVS.セット、ナッシング&フラッシュドローVS.Aペア、1ペア&フラッシュドローVS.オーバーペア、etc.。これらでオールインに持ち込んでしまうのだ。私見では、これこそが理論と実践の間の線引きが必要なケースだ。理論上アウツが13あったとしても、それらのアウツのうちいくつかでは結局勝てないと想定しないのは現実的なのか?この現実逃避は本当にあなたのポーカーに対する姿勢なのか?もちろんスーテッドコネクターにバリューがあるのは分かる。しかしそのバリューが発揮される状況は実にまれであり、こういったハンドを過大評価することは本当に危険だ。これらハンドに対する僕のアドバイスは、とにかくマニュアル通りにプレイすることだ。アーリーポジションではほとんどフォールド。ミドルならリンプ可、しかしアーリーからのレイズはコールしない。そしてレイトポジションではベット額の低いマルチウェイポット(3人以上のプレイヤーが参加するポット)には積極的に参加していい。そしてポストフロップはとにかく慎重に。2-1や3-1のオッズで張り切ってオールインしてもモンスタードローがヒットせず癇癪を起こすことになる。先の例で述べたように、とにかく状況を読み、ハンドを分析し、ベストな判断を下す。大きなドローに目がくらみオールインし、後で反省するようなことは避けたい。反論もあるだろうが、ノーリミットの10人卓のリングゲームではこれが最高のアドバイスだと約束しよう。

 

最後に
ブラフについてはいったん忘れよう。まずは全てのハンドをきちんとプレイし、状況を分析し、常に次の行動のことを考える。その中でブラフが通用すると思えるポイントがあったら是非使って欲しい。しかし、ただブラフをしたいがために状況を探すようではいけない。ほとんどのプレイヤーがトラブルに陥る。ノーリミットで気を付けなればならないのは、たとえオールインのブラフが3回連続で成功したとしても、4回目で失敗したら結果は同じ、破産だ。さあ、次にテーブルに着くときはすべてのハンドや状況について考えるよう努めて欲しい。ポーカープレイヤーのように考え始めれば、ポーカープレイヤーのようにブラフすることが出来るようになるはずだ。

 

machmood著
Two Plus Two Blogs 2009年6月25日投稿
http://blogs.twoplustwo.com/Marc-DeCorso/